最高におもしろい海外文学ベスト4

最高におもしろい海外文学ベスト4 選書コーナー
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画像提供:pixabay

TITLE : Winesburg, Ohio: A Group of Tales of Ohio Small-Town Life
AUTHOR : Sherwood Anderson
YEAR : 1919

『ワインズバーグ、オハイオ』は、
「ワインズバーグ」という
オハイオ州の架空の田舎町を舞台に、
住民たちの様々な人間模様を描いています。

ワインズバーグの住民たちの多くに
共通していえるのは、
彼らが臆病な野心家たちである
ということです。

臆病なわりには、人一倍野心が強いせいで、
このスモール・タウンに
うまくなじむことができないんですね。

窮屈な田舎の生活から抜け出して、
広い世界へ飛び出していきたいと願いつつも
二の足を踏んでいる人たちがいる一方で、

それぞれの事情を抱えながら
追われるようにして町を離れ、
このワインズバーグへ
流れてくる人たちもいます。

小さなコミュニティの中で孤立する疎外感と
単調な生活に対する
苛立ちからくる焦燥感で、

頭と心のバランスが
徐々にいびつになっていく人たち。

この小説の特筆すべき点といえば、
まさに、そのような人々の小さな声を
丁寧に汲み取って、

新聞記事のように、それを淡々と書き記す、
その描写力といえるでしょう。

この小説を読んでいると、
中島みゆきの『ファイト!』
思い出すんですよね。

あの歌の歌詞に出てくる人たちというのは、
なんとなく、ワインズバーグの
登場人物たちと似ているような気がします。

TITLE : Big Two-Hearted River
AUTHOR : Ernest Hemingway
YEAR : 1925

ニック・アダムスという青年が
山に入ってソロキャンプをする、
というシンプルなお話です。

ハイキングと、キャンプと、釣りという
3つのアクティビティを展開しながら、
主人公が山の遊びを満喫する様子を
いきいきと描いています。

短編ということもあって
サクッと読めてしまうので、

まるでキャンプ動画を
鑑賞しているような気分で、
物語を楽しむことができると思います。

私パイヌは、キャンプも釣りも、
やったことがないんですが、
説明がとてもわかりやすいので、

テントの張り方とか、釣り竿の準備とか、
それをやったことがある人にしか
わからないような手順であっても、
具体的にイメージしやすいんですよね。

昨今のキャンプ・ブームの影響もあって、
「キャンプ飯」と呼ばれるレシピが
世間の注目を集めていますが、

ヘミングウェイのキャンプ飯というのも、
一見の価値ありだと思います。

文字からいいにおいがする、といったら、
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、
調理と食事のシーンを読んでいると、
必ずといっていいほどお腹が空いてきます。

ヘミングウェイの小説に出てくる料理は、
一杯のコーヒーから
メインディッシュにいたるまで、
なんでもおいしそうに見えるんですよね。

TITLE : The Moon and Sixpence
AUTHOR : William Somerset Maugham
YEAR : 1919

40歳になる平凡な中年男が、
突然仕事も、妻子も捨てて、画家を目指す。

とても信じられないような話なんですけど、
もっとびっくりなのが、
彼が絵の勉強をはじめたのは
ほんの1年前のことだったという事実です。

画家になることは
子どもの頃からの夢だったそうなんですが、

このストリックランドには、
周囲が一目置くような絵の才能が
あったわけでもなければ、
勉強をしていたわけでもなかったんですね。

このような不可解とも思える行動の裏で、
ストリックランドを突き動かしたものは
なんだったのか?といえば、

ひとえに、「描かなくてはいけない」という
使命感にも似た強い意志です。

お世辞にもうまいとはいえない
子どものお絵描きのような作品を見た人々は
まさか、冗談だろ?と
思わず困惑してしまうんですが、

当人はというと、周囲の反応など
まったくお構いなしです。

極貧の生活のなかで、
からだが骨と皮になりながらも、
ストリックランドはひたすら描き続けます。

数奇な運命をたどった
奇人変人ストリックランドの生き様
というのは、

真似できないし、
真似しようとも思わないにしても、
なんだか惚れ惚れしてしまうといいますか、
純粋にかっこいいよなと思います。

TITLE : Anne of Windy Willows
AUTHOR : Lucy Maud Montgomery
YEAR : 1936

この小説は、『赤毛のアン』の続編
一つになります。

ちなみに、この『風柳荘のアン』は、
物語の時系列に従えば、
シリーズの第4作目にあたります。

『赤毛のアン』の魅力というのは、
もう語りつくせないほど
たくさんあるんですけど、

一つには女性の生き方の多様さ
挙げられると思います。

『赤毛のアン』の舞台は
19世紀の後半にあたるんですけど、

当時はまだ「良妻賢母」のイメージが
女性の理想像として根強くあったと
いわれています。

その一方で、この時代というのは、
近代化が加速するにつれて
「キャリアウーマン」という新しい道が
切り開かれていった時期でもありました。

『赤毛のアン』ことアン・シャーリーも、
そのような新しい生き方を選んだ女性
一人だったんですね。

この物語は、大学を卒業したのちに、
アンが、サマーサイドという町の高校の
校長先生を務めた3年間の出来事を
描いています。

不運なことに、アンは赴任して早々、
この町の名家である一族から
目の敵にされてしまいます。

周囲の人々が、寄ってたかって
自分を町から追い出そうとする
絶体絶命の窮地を
アンはいかにして乗り越えていくのか?

雪解けと旅立ちをめぐる
女性たちの人生の物語に、
胸が熱くなること間違いなしです。