民俗学入門―はじめて読む人におすすめの5冊

民俗学入門おすすめ5冊 選書コーナー
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画像提供:Canva

日本の昔話

TITLE : 日本の昔話
AUTHOR : 柳田国男

絵本やアニメなどを通して、
子どもの頃から慣れ親しんだ昔話を
文学作品として読み返すことも
また一興です。

本書では、日本各地で採集された
さまざまな昔話が紹介されています。

多種多様に語り継がれてきた昔話ですが、
とりわけ興味深いのが、

遠く離れた土地で、
似たような話が伝わっている


という不思議な実態です。

このミステリーに視点を置きつつ、
考察とユーモアをまじえながら、
物語をおもしろおかしく
語り聞かせてくれます。

日本の伝説

TITLE : 日本の伝説
AUTHOR : 柳田国男

実在する(した)土地や、神社仏閣、
人物などにまつわる由縁に注目しながら、
言い伝えの正体=起源に迫ります。

先ほど紹介した『日本の昔話』にくらべて、
本書はより民俗学的な内容の濃い
作品となっています。

かといって、とっつきにくい
ということはありません。

読みやすさはそのままに、
民間伝承にまつわる一歩踏み込んだ話
知ることができます。

本書には、
10個の伝説が収録されているのですが、

非常に興味深いことに、
それらが最終的に1本の線でつながる
という仕掛けになっているのです。

神話と史実がつながる瞬間に、
あっと驚くこと間違いなしです。

忘れられた日本人

TITLE : 忘れられた日本人
AUTHOR : 宮本常一

本書は、私パイヌが、
「民俗学」というジャンルに興味を持つ
きっかけとなった本でもあります。

教科書やドラマで取り上げられるのは、
王侯貴族&豪農・豪商が活躍する
歴史のいわば表舞台がほとんどです。

一方で、庶民の暮らしに視点を置く民俗学は
その舞台裏に相当します。

いつの時代もそうですが、
社会のエリート層に対して、数のうえでは
それをはるかにしのぐ庶民が
存在するのです。

にもかかわらず、その暮らしぶりについて、
本人から直接話を聞くという以外に
ほとんど知る機会がないというのは、
むしろ不思議なことではありませんか?

著者のフィールドワークの記録には、
当時を知る庶民たちが登場します。

そこからは、明治・大正・昭和という
激動の時代を生き抜いてきた人々の様子を
うかがい知ることができます。

歴史の生き証人たちの生の声には、
感慨深いものがあります。

日本の歴史をよみなおす

TITLE : 日本の歴史をよみなおす
AUTHOR : 網野善彦

教科書の歴史だけでは物足りない!

そんな方にこそ、
ぜひとも手に取ってもらいたい本です。

日本を揺るがす大事件や、
歴史上の人物たちの偉業については
よく知っているという人でも、

貨幣、穢れ、女性、百姓、荘園、貿易など、
歴史の表舞台にはなかなか出てこないような
テーマについては、

あまり詳しくないという人が、実のところ、
少なくないのかもしれません。

とはいえ、これらの事柄を知らずして、
日本の歴史を理解することは
ほぼ不可能と言っていいと思います。

「真実は細部に宿る」とは
よく言ったもので、

人目を引くテーマだけを追究していては、
いつまで経っても本質的な部分は
見えてきません。

教科書には載っていない、
日本の「もう一つの顔」

あなたも知りたくありませんか?

ひらがなでよめばわかる日本語

TITLE : ひらがなでよめばわかる日本語
AUTHOR : 中西進

漢字にすると別物になるが、
「ひらがな」にすると同じになる。

日本語には、そのような言葉が
たくさんあります。

たとえば、「顔」のなかに「植物」が
隠れていることをご存じでしょうか。

「目」→「芽」
「鼻」→「花」
「歯」→「葉」

こじつけに見えるかもしれませんが、
実は、すべてにきちんとした
意味のつながりがあるのです。

言葉で「分ける」のではなく、
言葉で「つなげる」。


これは、日本語の特徴でもあります。

昨今では、その曖昧さを問題視する声を
いろいろなところで耳にします。

しかしその一方で、このような日本語の
包容力を見落としてしまうのは、
非常にもったいないことです。

意味の違いではなく、その類似性にこそ、
言葉の本質が存在するのですから。